競馬の話◆回想1992年春


「マックイーンやった! マックイーンやった! 2着にカミノクレッセ、
2着にカミノクレッセです!………秋の悔しさを少しでも晴らしたか、武豊と
メジロマックイーン! 春の天皇賞連覇は史上初〜!!」

春の天皇賞でメジロマックイーンが、宿敵トウカイテイオー(5着)を下して、
人馬ともに復権を果たした時の杉本清アナウンサーの実況です。
あんまり嬉しくて、僕はこの実況を録音して、スタートからゴールまで丸暗記しました。
今はもうほとんど忘れましたけど。(笑)
杉本清アナウンサーはゆっくりしゃべっているように聞こえるのに、実際やってみると
相当早口じゃないと、3分20秒ではしゃべれないのに驚いたものです。

このレースは、本当に緊張しながら見ました。
昨年のことがあったので、どうしても負けられない、いや、どうしても武豊騎手に勝って
欲しいレースでした。

後々雑誌で読んだのですが、武騎手もこのレースに負けたら、マックイーンから降ろして
もらう覚悟だったそうですね。
いやー、勝ってよかった。ホントにホントによかった!

そして、翌週の土曜日の予定を見ると……
なんと、武騎手の騎乗が東京競馬場になっているではないですか!!
こんなことってあるのか! と思いましたよ。
勿論行きました、東京競馬場。再び朝のパドックです。
僕の方も昨年の秋とは比べ物にならない精神状態でした。
それでも、やはり静かなパドックで、武騎手に声をかけるのは相当勇気がいりましたが。

今度は、武騎手がちょうど僕の目の前に来た時、ちゃんと声が出てくれました。
「天皇賞、おめでとう」
勝負師としては、馬上の人となった以上、気持ちは次のレースにむいていたでしょう。
厳しい顔つきでしたが、それでも武騎手は僕のほうを見て、うなずいてくれました。
ほんの小さく。わずか5ミリぐらいでしょうか。でも確かにコクッと。
格好よかったですよー!
今でも思い出すとぞくっとします。僕にとってはこの上ない思い出です。


<おわり>





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